●●●全国的な関心を集める京都の高級マンション
京都で販売される高級マンションは、京都に住む人だけではなく、関西圏・中京圏・首都圏などの大都市に住む人を中心に、全国的な関心を集めています。
それは、なぜでしょうか。多くの日本人の身体には、JR東海のキャッチコピーが深く染み付いています。
【そうだ京都、行こう。】
このキャッチコピーの発展系を考えてみましょう。
【そうだ京都、住もう。】
京都にマンションを購入してセカンドハウスとして使用できれば、さぞ楽しいことでしょう。
京都で最近、全国的な話題を集めたマンションは、なんといっても三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」でした。振り返ると、このマンションは2回、話題になっています。
1回目は、2015年11月に販売を開始した時点です。このときには、鴨川に面した専有面積287平方メートルの住戸の価格が7億円超と、西日本の物件として最高価格を記録。記者発表に参加した全国紙やテレビが一斉に報道しました。
私は京都でタクシーに乗るたびに、運転手さんに「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」について質問してみました。すると、皆さんが7億円超という価格をご存知でした。三菱地所レジデンスの名前は、京都市民にも広く知れ渡ったことと思われます。このマンションは2017年3月に完成しました。
2回目は、2017年6月下旬です。マンションへの入居が始まる直前に、三菱地所レジデンスは記者発表を開いて内部を公開しました。それを、全国紙やテレビが伝えたため、再び話題になりました。
このとき、朝日新聞デジタルは、「最高7億円──京都のマンション内部を公開、全戸完売済み」と記しています。一方、産経WESTは、「京都・鴨川に住まう──これが西日本最高額7.5億円マンション、東京人どっと購入」と記しています。
“7億円”と“7.5億円”では、いったいどちらが正確なのでしょうか。三菱地所レジデンスの担当者に確認すると、正解は7億4900万円でした。
記事にタイトルを付けるときには文字数の制限があります。それを考えると、朝日新聞デジタルは「最高7億円」ではなく、「最高7億円超」としていれば正確でした。
一方、産経WESTは、「7億4900万円」とするとタイトルが長すぎるので、四捨五入して「7.5億円」に縮めたと思われます。これはこれで立派な表現なのですが、厳密には「約7.5億」としていれば正確でした。
鴨川の東岸から見た「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」。傾斜した屋根を持つ和風の建物が、周辺の景観に溶け込んでいる(画像は三菱地所レジデンスの提供)
●●●「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」の次の物件は?
「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」という話題の物件を販売した三菱地所レジデンスは、次に京都でどんな物件を販売するのだろう・・・、と考えて少し調べてみました。
すると同社が京都で手がけた「ザ・パークハウス」はわずか4物件で、5物件目がまもなく販売される予定であることが分かりました。
(1)ザ・パークハウス二条城──2011年8月完成
(2)ザ・パークハウス北野白梅町──2014年2月完成
(3)ザ・パークハウス御所西──2015年3月完成
(4)ザ・パークハウス京都鴨川御所東──2017年3月完成
(5)ザ・パークハウス三条油小路──2017年9月下旬頃に販売予定
読者の皆さんは、「ザ・パークハウス」が京都にわずか4物件しか存在しない理由を、ご存知ですか。それは簡単です。三菱地所から三菱地所レジデンスが独立し、従来の「パークハウス」が「ザ・パークハウス」と変わったのが2011年1月であるためです。
さて、京都で5物件目となる「ザ・パークハウス三条油小路」には、「京都・田の字エリア、初のザ・パークハウス」というキャッチコピーが付いています。
「ザ・パークハウス三条油小路」の正面外観。建物は5階建て、戸数は37戸(画像は三菱地所レジデンスの提供)
●●●高級マンションが多い京都「田の字」エリア
京都「田の字」エリアとは何でしょうか。まず、地図を見てください。
「田の字」エリア概念図(画像は三菱地所レジデンスの提供)
「田の字」エリアとは、北端を御池通、東端を河原町通、南端を五条通、西端を堀川通に囲まれたエリアを意味しています。住所表示でいうと、すべて京都市中京区と下京区に含まれています。
外周を走る御池通、河原町通、五条通、堀川通に、エリアの中央部を東西に走る四条通と、南北に走る烏丸通を加えると、漢字の「田の字」を連想させることに由来する名前です。
「ザ・パークハウス三条油小路」は、「田の字」エリアの左上のブロック(北西のブロック)に位置しています。敷地は三条通と油小路通の交叉点近くにあります。
商業施設や公共施設が集中し、神社や仏閣などの観光名所にもアクセスしやすい立地で、京都で最も賑わいと活気に満ちたエリアとされています。そのためマンションの価格は高いのですが、利便性がいいためおおむね売れ行きは好調です。
「田の字」エリアのマンションは誰が購入するのでしょうか。これまで複数の大手不動産会社に取材した経験では、「京都に住む人と、京都以外に住む人がほぼ半々」になるケースが多いようです。
キャッチコピーを整理すると、こんな感じになります。
【京都以外に住む人──希望は三段重ね】
そうだ京都、行こう。
そうだ京都、住もう。
そうだ京都、『田の字』エリアに住もう。
【京都に住む人──希望は一つ】
そうだ京都、『田の字』エリアに住もう。
●●●「田の字」エリアの平均坪単価
「田の字」エリアで最近販売された分譲マンション(含む、販売済み物件)について、平均坪単価を調べてみました。
【左上ブロック(北西ブロック)】
約285万円
約336万円
約395万円
【右上ブロック(北東ブロック)】
約307万円
約339万円
約380万円
【左下ブロック(南西ブロック)】
約211万円
約221万円
約265万円
【右下ブロック(南東ブロック)】
約271万円
約291万円
約313万円
ひと言に「田の字」エリアといっても、坪単価が高いのは四条通より北側の「左上ブロック」、「右上ブロック」であることが分かります。
ちなみに京都市全体の平均坪単価を調べると、2015年には約246万円、2016年には約250万円でしたので、「田の字」エリアの物件が価格を引き上げていることが分かります。
なお坪単価がA万円、専有面積がB平方メートルの住戸の場合、価格は次のようにして求めます。
価格=(A÷3.3)×B
例えば坪単価が350万円、専有面積が70平方メートルの場合には、次のようになります。
価格=(350÷3.3)×70=約7424万円
●●●「田の字」エリアでは建築活動が活発
せっかくの機会ですので、「田の字」エリアの建築活動についても、しっかり勉強しておきましょう。京都市は2017年3月に、「京都市景観白書データ集(2016年度)」と題する資料集を公表しました。その3ページ目に、次のような図表が掲載されています。
(「京都市景観白書データ集(2016年度)」に掲載された、「田の字地区とそれらに囲まれた区域における建築活動の状況」から引用。図表のタイトル──「田の字」エリアの建築活動──は、筆者が書き加えたもの)
この図はまず、「田の字」エリアは、大きく茶色のエリア(31m高度地区)と緑色のエリア(15m高度地域)に分かれることを示しています。
茶色のエリアは幹線道路(北から御池通、四条通、五条通、東から河原町通、烏丸通、堀川通)に面した地域で、高さが31mの建物(10階程度)まで建てることが可能です。
これに対して、緑色のエリアは幹線道路ではない通(小路)に面した地域で、高さが15mの建物(5階程度)まで建てることが可能です。
赤丸、青丸、灰丸は、建物を新築するために必要な「確認済証」が交付された敷地です。丸印の数を数えるとざっと600個ありました。約11年間で600件ですので、1年間では約55件になります。つまり建設活動がかなり活発であることが分かります。
言葉を換えると、「田の字」エリアは極めて人気が高いのです。
●●●「ザ・パークハウス三条油小路」の特徴
最後に「ザ・パークハウス三条油小路」の特徴を、箇条書きにしてみました。
(1)最寄りの地下鉄東西線・烏丸線「烏丸御池駅」から徒歩8分の距離にある。
(2)「田の字」エリアの商業施設に加えて、堀川通西側の三条通商店街も利用できる。
(3)敷地は油小路に面していて、周辺には京町家を中心に小振りな建物が立ち並ぶ。
(4)建物外観のテーマは「くずしと洗練」。京都の伝統的なデザインに、
西洋的なテーストを加えた。
(5)専有面積は約54平方メートル〜約83平方メートル。
(6)モデルルームの資料はレジデンスギャラリーを訪ねたユーザーだけに配布される。
(7)想定購入者は京都の人が5割〜6割、京都以外の人が4割〜5割の見込み。
(8)平均坪単価は300万円を超える見込み。
(9)第1期販売は9月下旬〜10月の予定。
1階エントランスホールの奥にあるラウンジスペース(画像は三菱地所レジデンスの提供)
【ザ・パークハウス三条油小路の概要】
所在地─京都市中京区三条油小路町
規模─地上5階、全37戸
売主─三菱地所レジデンス
設計─アクセス都市設計
施工─大末建設
竣工─2018年8月予定
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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。
建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。
著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。