細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第16号]1棟リノベーションマンションという選択肢

2018年06月13日

細野 透 ( ほその とおる )

新築マンション、新古マンション、中古マンション

 
 分譲マンションは大きく、「新築マンション」、「新古マンション」、「中古マンション」の3種類に分かれます。少し複雑なので、表を使って説明しましょう。

 参考図

 新築マンションとは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の第2条第2項によって、「竣工して1年未満」で、かつ(and)「未入居の住戸」と定義されています。

 新古マンションとは、「竣工して1年以上」で、かつ(and)「未入居の住戸」を意味します。

 中古マンションは大きく2種類に分かれます。まず不動産業界の自主基準である「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」の第3条10項によれば、「竣工から1年以上の住戸」、または(or)「既に人が住んだことがある住戸」を意味します。

 次に公的な立場から住宅ローンを行う「住宅金融支援機構」のマンション購入融資説明書(中古住宅適合証明かんたんガイド)によれば、中古マンションとは、「借入申込日が竣工から2年を超えている住戸」、または(or)「既に人が住んだことがある住戸」を意味します。

 

「普通の中古マンション」と「1棟リノベーションマンション」

 
 さて、あなたが新築マンションではなく、中古マンションを探しているとしましょう。そのとき、大きく2つの選択肢があり得ます。「普通の中古マンション」と「1棟リノベーションマンション」です。

 「普通の中古マンション」とは、既に人が住んだことがある住戸を意味しています。一般的には、「住戸の所有者が不動産会社に依頼して売りに出し、購入希望者が住戸を見て買うかどうかを決める」というやり方になります。
 
 これに対して、まだそれほど知られていないのが「1棟リノベーションマンション」です。リノベーションとは、「刷新」とか「徹底的な修復」を意味しています。

 中古マンションを販売するのは、その住戸の所有者(主に個人)になります。

 しかし1棟リノべーションマンションの場合には、不動産会社が「企業の社宅」や「賃貸マンション」などをそっくり買い取って、共用部と専有部を徹底的に刷新・修復した後に、売りに出すケースが一般的です。

 

1棟リノベーションマンションの供給数1位はリビタ

 
 現在までに最も多数の「1棟リノベーションマンション」を供給してきたのはリビタです。同社は2005年5月に東京電力の子会社として発足しましたが、東日本大震災の発生に伴って、2011年12月に京王電鉄の子会社に変わりました。

 リビタは「1棟丸ごとリノベーション分譲事業」を、2005年に開始。2016年9月時点で、43棟1359戸の実績を持っていてます。

 同社の自慢は、2010年から2017年まで、8年連続でグッドデザイン賞を受賞していることです。

 2016年には1棟丸ごとリノベーション分譲マンション「リノア三鷹」(東京都三鷹市、43戸)、が受賞しています。

 この「リノア三鷹」は、「“家を買う”という発想ではなく、“暮らしの場を買う”という発想が非常に現代的であり、そこに立脚し、その共生のあり方を模索する姿勢に共感を得られる」と高く評価されています。
 

都心に1棟リノベーションマンションが増える理由

 
 不動産経済研究所は2016年10月31日に、初めて「1棟リノベーションマンション動向」に関するプレスリリースを発行しました。

 それによると、2005年から2016年7月までの期間に改修された1棟リノベーションマンションは、143物件(5860戸)に達しています。

 1棟リノベーションマンションはなぜ増えているのでしょうか。その背景にあるのは、東京圏で2016年に初めて新築マンションの供給戸数が、中古マンションの成約件数を下回ったことにあります。新築と中古の逆転は、マンションの歴史においてインパクトのある出来事になりました。

 新築マンションの供給戸数が中古マンションの成約件数を下回った理由の1つは、都心部で新築向けの用地取得が難しくなってきたためです。その打開策として、企業の社宅や賃貸マンションを購入して刷新・修復する、1棟リノベーションマンション方式が注目され始めました。

 中古マンションの成約件数が、新築マンションの供給戸数とほぼ等しい現在、1棟リノベーションマンション市場はさらに深掘りされていくに違いありません。

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。

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