細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第33号]東京の新築マンションで「販売価格と専有面積の法則」を学ぶ(応用編)

2019年11月07日

販売価格と専有面積「8つのパターン」

 前回掲載した、新築分譲マンションの「販売価格と専有面積の法則」を学ぶ(入門編)では、以下の図に示した、「❶〜❽という8種類のパターン」について説明しました。

 記事のURL
 <https://www.sumai-surfin.com/columns/aka-ao-ki-shingo/hosono-20191002>

 

「価格と専有面積の法則──東京都の新築マンション」

 今回は、東京の新築マンションで「販売価格と専有面積の法則」を学ぶ──、というタイトルで、より具体的に説明していきたいと思います。

 まず、「販売価格と専有面積の推移──東京都(1994年〜2018年)」と題する図を見て下さい。

 この図は、長谷工総研のプレスリリース「CRI 2019年2月号特集レポート」に掲載された図の引用です(以下にURL)。
 <https://www.haseko.co.jp/hc/information/upload_files/20190130_1.pdf>

 図は「都内23区」と「都内23区以外」に分かれているのですが、このうち「都内23区」に注目することにしましょう。

 

「都内23区の価格と面積──8つのパターン」

東京「都内23区」の「販売価格と専有面積の推移図」を、「❶〜❽までの8種類のパターン」を使って分析すると、次のように説明することができます。

 2014年「「平均価格約6000万円、平均専有面積約68.3平方メートル」
        ↓
    〔❺ミニバブル的な傾向──価格は約750万円上がり、専有面積は余り変わらない〕
        ↓
 2015年「平均価格約6750万円、平均専有面積約68.1平方メートル」
        ↓
    〔❷不景気時に似た傾向──価格は約150万円下がり、専有面積も約2平方メートル減る〕
        ↓
 2016年「平均価格約6600万円、平均専有面積約66.0平方メートル」
        ↓
    〔❺ミニバブル的な傾向──価格だけ約490万円が上がり、専有面積は余り変わらない〕
        ↓
 2017年「平均価格約7090万円、平均専有面積約65.5平方メートル」
        ↓
    〔❹不思議な左矢印的な傾向──価格はほぼ変わらないのに、専有面積が減ってしまう〕
        ↓
 2018年「平均価格約7150万円、平均専有面積約62.8平方メートル」

 

4年間を全体として見ると「バブル全盛期直前に似たパターン」

 その一方、2014年〜18年の4年間を全体として見ると、次のようなまとめ方も可能です。

  2014年「平均価格約6000万円、平均専有面積約68.3平方メートル」
        ↓
  2018年「平均価格約7150万円、平均専有面積約62.8平方メートル」

 すなわち、価格は約1150万円アップしたものの、専有面積は約5.5平方メートル減りました。これは「新築分譲マンションの価格と面積──8つのパターン図」では、ほぼ「❼バブル全盛期直前のパターン」に該当します。
 
 かつて東京圏では、1986年〜1987年の「❼バブル全盛期直前のパターン」に続いて、1987年〜1991年には「❺バブル全盛期」が到来。販売価格が一気に2420万円も高騰しました(専有面積は約3平方メートル増)。

 

「一種のミニ不動産ブーム」という判断

 さて、東京圏では2014年〜18年の「❼バブル全盛期直前のパターン」に続いて、東京2020大会の開催に向けて「❺バブル全盛期」が来るのでしょうか?

 答えは「来ない」になります。換言すると、日本経済新聞、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済などのマンション市場に強い有力経済紙・経済誌の記事を読む限り、そういう事態はあり得ないようです。

 したがって、東京23区の新築分譲マンションで2014年〜18年に観察されたパターンは、「❼バブル全盛期直前のパターン」と解釈しない方がいいと思われます。

 ちなみに、私自身は「一種のミニ不動産ブーム」と判断しています。

 長谷工総研のデータ、「販売価格と専有面積の推移──東京都(1994年〜2019年)」が公表されるのは、2020年2月頃と思われます。新しいデータには、どんなパターンが観察されることになるのでしょうか。

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。