細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第43号]大手各社が注力する「コロナ対応マンションの最新事情」

2020年09月01日

細野 透 ( ほその とおる )

「住戸内テレワークルーム」vs「共用空間内テレワークルーム」

 マンション大手デベロッパー各社は最近、「新型コロナ問題に対応するための、様々な工夫を盛り込んだ新築分譲マンション」の販売活動を、次々にスタートさせています。これまでのところ、そのタイプは大きく、「住戸内テレワークルーム」型と「共用空間内テレワークルーム」型に分かれています。

◆「住戸内テレワークルーム」型

 新型コロナ問題の発生以降、多くの企業が、「会社のオフィスに出勤せずに、自宅でテレワーク(パソコンとインターネットを活用した在宅勤務)を行うスタイル」を導入しました。

 しかし、実際にテレワークを行ってみると、自宅(マンション)には「自分の部屋」、あるいは「書斎として使用できる空間」が少ないのです。そのため、「会社のオフィスと同じようには、仕事に集中することができない」、といった声がしばしば聞かれるようになりました。

 この声に応えて、マンションを建設する時点で、「各住戸に書斎としても使用できる空間を用意しておこう」というのが、「住戸内テレワークルーム」型です。

◆「共用空間内テレワークルーム」型 

 一方、マンションを建設する時に、「共用部に、入居者が誰でも利用できる広いコワーキングスペースを用意しておき、そこをテレワークの場所として活用しよう」というのが、「共用空間内テレワークルーム」型です。

 「コワーキングスペース」は、英語では「CO-WORKING-SPACE」と書き、これを訳すと「共に働く場所」という意味になります。

 その特徴としては、きちんとした情報ネットワークを備えている、利用者が互いにコミュニケーションを取ることが可能、などが挙げられます。

 

三菱地所レジデンス「テレワークが可能な『箱の間』を持つマンション」

 このうち、「住戸内テレワークルーム」を持つ新築分譲マンションについてざっと調べると、三菱地所レジデンスが先頭を走り、日鉄興和不動産、大成有楽不動産、野村不動産など各社がそれを追うかたちになっています。

 その三菱地所レジデンスは2020年6月5日、「住まい×テレワーク──暮らしながら働ける空間を実現」と題するプレスリリースを公表しました。

 リリースのURL
 <https://www.mec-r.com/news/2020/2020_0605.pdf>

 ──新型コロナ問題の発生以降、多くの企業が「会社のオフィスに出勤せずに、自宅でテレワークを行う」、というスタイルを導入しました。

 しかし、実際にテレワークを行ってみると、自宅(マンション)には書斎や自室などがない場合が多いため、「会社のオフィスと同じようには、仕事に集中するのが難しい」といった声が良く聞かれます。

 そこで今回、「箱の間(有償)」「ウォーク・イン・クローゼット・タイプ(無償)」 「妻ラボ・夫ラボ(有償)」 など、3タイプの特別オプションを用意しました──。

【導入プロジェクト】
「ザ・パークハウス 三田ガーデン レジデンス&タワー」
「ザ・パークハウス 市谷加賀町レジデンス」
「ザ・パークハウス 武蔵野境南町」
「ザ・パークハウス 川口本町」
「ザ・パークハウス さいたま新都心」
「ザ・パークハウス 鎌倉」
「ザ・パークハウス 市川二丁目」

 「箱の間」タイプの画像
「箱の間」タイプの画像(プレスリリースに添付された画像データを使用)

 上の画像には、A「書棚に似た感じの箱」とB「机に似た感じの箱」が写っています。このAとBを組み合わせて出来る空間を、「箱の間」と呼びます。

 「箱の間」のレイアウト例1
「箱の間」のレイアウト例1

「箱の間」のレイアウト例2
「箱の間」のレイアウト例2

 「A書棚に似た感じの箱」と「B机に似た感じの箱」の組み合わせ方、および配置する場所によって空間の雰囲気が変わってくることが、お分かりでしょうか。

◆グッドデザイン賞を受賞

 この「箱の間」は、実は2017年度グッドデザイン賞を受賞しています。審査を担当した各委員は次のように評価しています。

 ──「家族構成やライフスタイルといった人の暮らしは変化しているが、例えば多くのユーザーに供給される分譲マンションの間取りや設えは、過去30年でほぼ変わっていない」。

 そういう問題意識から、家具とインテリア(室内空間)の中間のような「箱の間」を存在させることで、暮らしの中にいろんな居場所を作り出そうという提案である。

 大仰なリノベーションではなく、あるいは既成家具のレイアウト変更では作り出せない暮らしのありようを、具体的な方法で実現している点が評価された──。

 このコメントからも分かるように、「箱の間」というシステムが柔軟性を備えているゆえに、マンションの住戸内に「テレワークが可能な空間」を素早く確保することができるのです。

 

東京建物「地域開放型コワーキングスペースを持つマンション」

 「住戸内テレワークルーム型」の次は、「共用空間内テレワークルーム型」です。これについてざっと調べると、東京建物が「地域開放型コワーキングスペース」をテーマに掲げて、先頭を走っています。

 そして三井不動産レジデンシャルが、「ニューノーマル時代に求められる暮らしのサービスニーズ」というコンセプトを掲げて、全速力で追いかけている状態であることが分かりました。

 ここでは、東京建物の分譲マンション「ブリリアシティ西早稲田」を紹介しましょう。これは敷地面積1万2000平方メートル超、総戸数454戸、2022年3月竣工予定の大規模な分譲マンションです。

 その最大の特徴は、共用部に「260平方メートル超、約90席、運営サービス付き、会員制の本格的なコワーキングスペース」を備えていることです。そして「地域住民も利用可能」になっています。

 「コワーキングスペース」は、英語では「CO-WORKING-SPACE」と書き、これを訳すと「共に-働く-場所」という意味になります。その特徴は会員用の専用スペースを確保している、きちんとした情報ネットワークを備えている、会員同士が知り合いになってコミュニケーションを取ることができる、などでしょうか。

「コワーキングスペース」の雰囲気を完成予想写真で確認してみましょう(プレスリリースに添付された画像データを使用)。

①コワーキングスペース。庭に臨んでいる
①コワーキングスペース。庭に臨んでいる

②個室ブース
②個室ブース

③集中ブース
③集中ブース

④会議スペース
④会議スペース

⑤シェアキッチン
⑤シェアキッチン

 東京建物による、2020年7月28日付けの「プレスリリース」は、次のように説明しています。

 ──2月28日の物件ホームページ開設以降、高い反響をいただき、お客様の資料請求数が3200件を超え、6月27日より開始した事前案内会では360組にご来場いただきました。

 また、モデルルームの来場予約については、7月25日から8月末まで満席となっており、累計650組を超える来場者となる見込みです──。 

 何だかすごい勢いですね。

リリースのURL
 <https://pdf.irpocket.com/C8804/djAz/KgRo/awxw.pdf>

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。