細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第61号]電通の「新型コロナ・日米定点・生活者意識調査」から学ぶこと

2022年03月01日

生活者の心理ステージ

 皆さんは、「新型コロナウイルス・日米定点・生活者意識調査」と題する「調査レポート」をご存知でしょうか。これは広告代理店として日本では最大手、世界では第5位に位置する「電通」が、第1回(調査時期2020年4月23〜24日)から、第19回(調査時期2021年11月17日〜19日)まで、連続的に発行してきたレポートです。

 調査は日本では「電通」、米国では「Dentsu Aegis Network US Holdings」が担当。 おおむね月に1回のペースで公表し続けています。それゆえに、「コロナの年となった2020年、2021年、2022年」について、日米両国の事情を振り返る時にとても便利です。

 まず、調査結果のうち、「日本の事情についてまとめた4点の図」を、紹介することにしましょう。


(図はすべて、電通のリリースから引用)

 この図は、生活者の心理を、5段階に分けて表現しています。
 濃い紫色「ステージ1---混乱・動揺」
 青色「ステージ2---変化への対応」
 緑色「ステージ3---順応・適応」
 オレンジ色「ステージ4---収束の兆し」
 赤色「ステージ5---収束後の生活へ」

 図表1のうち、「2021年11月17日〜19日に実施された第19回調査」を見ると、次のような結果になっています。

 濃い紫色「ステージ1---混乱・動揺8%」
 青色「ステージ2---変化への対応25%」
 緑色「ステージ3---順応・適応 37%」
 オレンジ色「ステージ4---収束の兆し26%」
 赤色「ステージ5---収束後の生活へ4%」

 これを要約すると、コロナのデルタ株だけを対象とすると、「収束の兆し26%」+「収束後の生活へ4%」=「30%」、ということになります。

 ただし、2021年11月24日に南アフリカから報告された、新型コロナウイルス変異株の1種「オミクロン株の登場」によって、「収束の兆し26%」+「収束後の生活へ4%」=「30%」、という期待は弾かれてしまいました。

 

「第19回調査」のもうひとつの側面

 実は、第19回(調査時期2021年11月17日〜19日)の結果のうち、以下に示す「図表3」には、「オミクロン株への予防策」が示されています。

 

 オミクロン株に備えるためには、「マスクを着用する/着用を徹底する」、「自宅で過ごす時間・活動を増やす」、「会う人の人数を減らす」・・・などの対策が必須です。

 すなわち、「図表3のうち、赤色で示された11の対策を、守ろうとする努力が必要」、と示唆しているのではないでしょうか。

 そういう気持ちで「図表3」に接すると、とても参考になります。

 この図を見ると、「3回目の接種をしたい人」が77%と圧倒的ですが、「接種をしたくない人」も23%います。なぜ、「接種をしたくない」のでしょうか?

 アンケート調査では、「その理由を質問してほしかった」と思います。

 

調査レポート(第1回〜第19回)の総括

 第1回調査レポート(2020年5月14日に公表)〜第19回調査レポート(2021年12月15日に公表)をザックリ総括すると、日本では「コロナの感染者数」に応じて、「コロナ対策が一進一退」を繰り返してきた、という印象が残ります。

 2022年が「一進一退から、亀のような歩みへ切り替える年」、すなわち「遅いように見えるかもしれないけれども、実際にはコロナ対策が着実に前進する年」になりますように・・・。

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。