細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第076号]石川県・能登地方を襲った「震度6強地震」のインパクト

2023年06月01日

各地で土砂崩れが発生、建物の倒壊も目立つ

 2023年5月5日の14時42分頃、石川県・能登地方で、「最大震度6強」の地震が観測されました。震源の深さは約10~12キロで、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.5でした。このため、各地で土砂崩れが発生したり、建物が倒壊したりしました。

 総務省消防庁によると、震度5強の揺れを観測した珠洲市では、はしごから転落した人が負傷して心肺停止状態になりました。またタンスの下敷きになって、負傷した人もいました。

 その一方、震度4を観測した「新潟県刈羽村」と、震度3を観測した「柏崎市」にまたがって建つ「柏崎刈羽原子力発電所」は、幸いにも運転停止中でした。それゆえに、周辺の放射線量を測定するモニタリングポストの値は「通常の変動範囲に収まった」ということです。

 また、石川県志賀町に建つ「志賀原子力発電所」からは、「この地震による異常は確認されていない」との連絡があったということです。

 

 

ここ数年、地震活動が活発だった能登地方

 気象庁によると、石川県で震度6強の揺れを観測したのは、2007年3月25日に能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の「能登半島地震」以来です。このときは石川県の七尾市や輪島市などで、震度6強の揺れを観測しました。

 そもそも石川県・能登地方は、珠洲市で震度6弱の揺れを観測する地震が起きるなど、ここ数年、地震活動が活発な地域とされています。

 特に、2018年ごろから小規模な地震の活動が確認されています。さらに2020年12月以降には、地震活動が活発化する傾向があったそうです。

 そして、2021年の春以降、震源が少しずつ変わりながら、活動がさらに活発化。9月にはマグニチュード5.1の地震が起き、珠洲市で震度5弱の揺れを観測。2022年6月には、マグニチュード5.4の地震が発生して、珠洲市で震度6弱の揺れが観測されました。

 また、能登地方全体でみても、たびたび地震の被害を受けていて、2007年3月にはマグニチュード6.9の「能登半島地震」が発生。1人が亡くなったほか、3万棟以上の建物が被害を受けました。

 このほか、1993年には能登半島の北の沖合でマグニチュード6.6の地震が発生しています。

 

「地震多発国」に住む国民の備え

 日本は地震が多発する国です。それに備えるために、我々国民はどうすればいいのでしょうか。「マンションに住む」ことを前提に、考えてみることにしましょう。

 こういう場合に頼りになるのは、やはり「日本建築学会」だと思われます。その建築学会の「住まい・まちづくり支援建築会議」は2007年10月に、「新築マンションを選ぶときには」と題する資料を作成しています。

 その内容を、以下に要約しましょう……。

 日本建築学会は「2005年の耐震強度偽装事件」の再発を防止するための包括的な対応策をまとめ、国に対して改革につなげて頂くよう要請いたしました。

 あわせて、学術団体として取り組むべき緊急の事項として、市民を対象とした社会貢献活動の実施などをかかげ、早急に取り組むことを宣言しました。

 このため、優れた社会資産としての住宅・建築の実現を支援する「住まいづくり支援建築会議」を2006年4月に発足させました。

 その目的は、市民が「新築マンションを選ぶとき」に役立つように、新築マンションを購入する時の期待と不安の「もと」を項目ごとに整理し、事実にもとづく立場から、できるだけわかりやすく解説しWeb上で公開することです。

 この資料の特徴は、「もし新築マンションを選ぶとしたら、どのような見方で選んでいくと良いか」ということを、項目ごとに基本に戻って、専門家の立場から解説したところにあります。

 マンションは高価な買い物ですから、買う前に市販の書物などで勉強したくなります。しかしそのような書物などに書いてある、「このようなマンションは買わないほうがよい」といった「ノウハウ」の、「わけ(理由)」を調べることは困難です。

 そこでこの資料は、その「わけ(理由)」を知って選ぶための『確かな目』を養うことに役立てていただくために、マンションの見方の基本を確かめられるように編集しました。

 また、Web上で公開する利点を生かして、項目ごとに関連するWebサイトを紹介していますので、積極的にご参照いただければ、さらに得られる情報が広がるものと期待しています。 

住まいづくり支援建築会議 情報事業部会長 西川孝夫

 

『長く暮らすためのマンションの選び方・育て方』

 建築学会はさらに、彰国社から2008年に、『長く暮らすためのマンションの選び方・育て方』 と題する解説書を出版しています。

 『長く暮らすためのマンションの選び方・育て方』には、次のような説明文が添えられています……。

 「マンションを買うこと」や「借りること」ばかりに目が行きがちだが、その前に選ぶ側に、マンションを「生活の器」として住み続けるために知っておくべきこと、考えておくべきことが色々とある。

  本書は、建築にかかわる専門家の視点から、「マンションに住むことのメリット」と「デメリット」の双方を紹介し、「管理や修繕まで、長く暮らすために知っておくべきことがら」を、分かりやすくまとめたマンションの小事典。

 時期の経過とともに価値を増し、人と人のつながりを生み出すマンションへと育てるための「アイデア満載 !」。

◼︎目次I 「マンションに住むとは」
 ⒈ 戸建てかマンションか
 ⒉ どこまでが自分のものか
 ⒊ マンションの仕組みを知る
 ⒋ 借りるか購入するか
 ⒌ 新築か中古か
 ⒍ さまざまなマンションタイプ

◼︎目次IIどこに住むか」
 ⒈ 都心か郊外か
 ⒉ 周りの環境
 ⒊ 土地の災害リスク<
 ⒋ まちの事故・犯罪リスク

◼︎目次III どう選ぶか」
 ⒈ 広告チラシの見方
 ⒉ モデルルームの見方
 ⒊ 内覧会の見方
 ⒋ 間取りの見方
 ⒌ 高さ、規模、安全の見方
 ⒍ 共有スペースの見方
 ⒎ 住宅性能表示制度の見方
 ⒏ 構造の見方
 ⒐ 防火と避難の見方
 ⒑ 内装の見方
 ⒒ セキュリティの見方
 ⒓ 室内の温熱環境の見方
 ⒔ 音環境の見方
 ⒕ 光環境の見方
 ⒖ バリアフリーの見方
 ⒗ SI住宅の見方

◼︎目次IV どう住み続けるか」
 ⒈ コミュニティとは
 ⒉ マンション管理とは
 ⒊ 瑕疵担保責任とは
 ⒋ 長期修繕計画とは
 ⒌ リフォームとは
 ⒍ 耐震診断・耐震改修とは

 以上のように、「マンションに住み続ける」ためには、まずI「マンションに住むとは」、II「どこに住むか」、III「どう選ぶか」、IV「どう住み続けるか」などの諸項目を慎重に検討する必要性があります。

 それに加えて、石川県・能登地方を襲った「震度6強地震」を参考にして、『災害に強いマンション』かどうかをキチンと確認してください。

 遺憾ながら、日本は地震国です。安心して住むためには、『災害に強いマンション』を選択するように努力しなければならないのです。

 

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。