細野透の「赤信号・黄信号・青信号」 不定期
細野 透

[第078号]日本経済新聞が『タワマン節税』に関するスクープ記事

2023年07月10日

主要メディアが『タワマン節税』に大注目

 今回は、『タワーマンション節税』、略して『タワマン節税』をテーマにしたいと思います。


タワーマンション「東京都・石川島公園」
(写真はフリー写真素材のフォトックから引用)

 手始めに、最新の情報を確認するため、インターネットのGoogleに、『タワマン節税というキーワードを打ち込みました(7月上旬)。すると、「ニュース」「改正」「画像」「分かりやすく」「最高裁」「仕組み」「否認」「裁判」「国税庁」という、9つの選択肢が現れました。

 私はこの中から、「ニュース」を選択しました。すると、ニュースの上位には、以下に示すような「記事」が並んでいました(7月上旬)。

【A】NHKニュース
 タワマン節税に新対策|サクサク経済Q&A|NHK
 富裕層などが相続・贈与の節税目的で超高層マンションの物件を購入する、
 いわゆる「タワマン節税」。国税庁は過度な節税を抑えるための対策を検討・・・。

【B】ダイヤモンド・オンライン
 国税庁の「タワマン節税」封じでマンションバブル崩壊?規制強化の直撃エリアを大胆予想!
 マンション購入により節税効果が得られる「マンション節税」や「タワマン節税」を封じるべく、
 国税庁は相続税の算定ルールを見直す方針を固めた。

【C】日本経済新聞(日経新聞)のウェブサイト
 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、相続税の算定ルールを見直す方針を固めた。
 実勢価格を反映する新たな計算式を導入すると、マンションの評価額と実勢価格との乖離(かいり)が、
 約1.67倍以上の場合に評価額が上がり、高層階ほど税額が増える見通しだ。
 年間10万人以上の相続財産が課税対象となる中、税負担の公平化を図る狙いがある。

【D】朝日新聞のウェブサイト
 「タワマン節税」に歯止め、評価額は市価の6割に 高層階ほど負担増!
 「タワマン節税」と呼ばれる相続税の軽減策をめぐり、国税庁は30日、新たな算定ルール案を発表した。
 マンションを相続する場合、相続税の算定根拠となる評価額が時価(市場価格)を大きく下回っていることへの対応。
 評価額を階数などを加味した市場価格の6割以上にするのが柱だ。

 このABCDを眺めていると、「餅は餅屋」という諺(ことわざ)を思い出しました。これは『何につけても、「結局はその分野の専門家に任せた方が上手くいくこと」を表したことわざです。

 私もその諺(ことわざ)に従って、日本経済新聞のウェブサイトを深掘りすることにしました。

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点1」

 実は、2023年の6月から7月にかけて、日本経済新聞は同社のウェブサイトに、『タワーマンション節税』に関する『一連の衝撃的なスクープ記事』を掲載し続けていました。

◼︎マンション節税防止「算定法見直し、評価額4割から6割に」(6月26日)

 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、相続税の算定ルールを見直す方針を固めた。

 実勢価格を反映する新たな計算式を導入。マンションの評価額と実勢価格との乖離(かいり)が約1.67倍以上の場合に評価額が上がり、高層階ほど税額が増える見通しだ。

 年間10万人以上の相続財産が課税対象となる中、税負担の公平化を図る狙いがある。

 現行ルールは1964年の国税庁通達に基づく。


タワーマンション「横浜市・港未来」
(写真は「フォトック」から引用)

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点2」

◼︎マンション節税防止へ「相続税、高層階の負担増」国税庁、算定に実勢価格を反映 (6月27日)

 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、相続税の算定ルールを見直す方針を固めた。

 実勢価格を反映する新たな計算式を導入。マンションの評価額と実勢価格との乖離(かいり)が約1.67倍以上の場合に評価額が上がり、高層階ほど税額が増える見通しだ。

 年間10万人以上の相続財産が課税対象となる中、税負担の公平化を図る狙いがある。

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点3」

マンション節税防止「公平性重点 富裕層以外に波及も」(6月27日)

 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に動くのは、相続税の仕組みが市場の変化に追いついていないからだ。ルール改正で過度な節税を防ぎ納税の公平感を保つ。富裕層にとどまらず一部の中間層にも影響が及ぶ可能性があり、政府は丁寧な説明が必要になる。

 「市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離(かいり)しているケースが見られる。適正化を検討する」。算定ルールの見直しは2022年末。

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点4」

マンション相続税なぜ見直し? 過度な節税に歯止め (6月27日)

 国税庁がマンションの相続税算定ルールを大幅に見直す方針を固めた。背景にあるのが、都市部のタワーマンションなどで広がっていた「マンション節税」や「タワマン節税」と呼ばれる過度な節税策だ。制度はどう変わり、誰にどのくらい影響があるのか。3つのポイントから読み解く。

 「1なぜ今ルール見直し?」
 「2新たな算定ルールは?」
 「3影響はどう広がりそう?」

タワマン節税防止、不動産株に売り 野村不動産4%安 (6月27日)

 6月27日の東京株式市場で不動産株の値下がりが目立った。国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止目的で相続税の算定ルールを大幅に見直すと伝わり、不動産需要が剝落するとの見方が利益確定売りを誘った。

 節税買いの縛りが不動産市況に与える影響は未知数だが、大手デベロッパーの業績への影響は限定的との冷静な見方も出ている。分譲マンションに強みを持つ野村不動産ホールディングスは大幅に続落した。


タワーマンション「川崎市・武蔵小杉」
(写真はフォトックから引用)

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点5」

タワマン相続、過度な節税に歯止め 市場は販売鈍化警戒 (6月28日)

 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に乗り出す。2024年1月からの適用を目指す新たな算定ルールは、相続税評価額を「実勢価格」の6割以上に引き上げることが柱だ。17年度の固定資産税見直しに続く改正で、マンション高層階の低い評価額を利用した過度な節税に歯止めをかける。影響は富裕層にとどまらず一部の中間層に及ぶ可能性がある。

タワマン相続に税の網 評価額、「実勢」の6割に上げ
 固定資産税に続き来年から 過度な節税歯止め(6月28日)

 国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に乗り出す。2024年1月からの適用を目指す新たな算定ルールは、相続税評価額を「実勢価格」の6割以上に引き上げることが柱だ。17年度の固定資産税見直しに続く改正で、マンション高層階の低い評価額を利用した過度な節税に歯止めをかける。影響は富裕層にとどまらず一部の中間層に及ぶ可能性がある。

 

日本経済新聞ウェブサイトの「要点」6

マンション相続税の新評価額、実際に計算してみると? (6月30日)

 国税庁が来年1月、マンションの相続税評価額の算定ルールを見直す。算定方法は具体的にどう変わり、どのくらい影響が出そうなのか。6月30日に公表された実際の計算式に基づいて試算してみた。

 マンションの相続税は建物と土地の評価額を合計し、金額に応じて10〜55%の税率が適用される。建物の評価額は、建築費などから地方自治体が算定する固定資産税の評価額を使う。土地の評価額は公示地価の8割を目安とする「路線価」から算出する。

 新たな算定ルールの導入には、実勢価格に比べて低い評価額を引き上げる狙いがある。導入前後で税額がどの程度変わるかを割り出す上で、まず必要になるのはマンション1室の評価額と実勢価格の乖離(かいり)の割合だ。

マンション相続税、高層・新築ほど負担増 24年1月から (7月1日)

 国税庁は30日、マンションで新たに導入する相続税の算定ルールを発表した。専門家の試算で、高層で新しいほど税負担が増える傾向の一方、税額が変わらないケースもみられた。カギを握るのが「階数」と「築年数」だ。国税庁は2024年1月からの適用を目指しており、ルールの周知も焦点となる。

 「乖離(かいり)の問題はマンション全体」「戸建てとのバランスに配慮すべきだ」。算定ルールについて検討してきた国税庁の有識者は・・・。

「タワマン節税」防止、新ルールの影響は(7月4日)

 国税庁が「タワマン節税」の防止に乗り出す。相続税の課税のもととなるマンション評価額は現在、実勢価格の4割程度。「タワーマンションの高層階の評価額が低い」ことを利用した節税が、富裕層を中心に広がっているため。

 国税庁は評価額を実勢価格の6割以上に引き上げるよう算定ルールを見直す。ただ、見直しの影響は富裕層にとどまらず一部の中間層にも及ぶ可能性もあるという。

 

細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。