田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第49号]人口動態定点観測のススメ〜大阪市のこどもの数を見て

2017年05月10日

今年1月の記事で「人口動態は不動産価値の将来性をはかる指標として重要」として「成人の日、こどもの日の定点観測はオススメ」と書いた。

[第41号]不動産価値と人口動態~関西の新成人人口を見て
https://www.sumai-surfin.com/columns/kansai-mansion-jijo/tanaka-20170116

今回の記事は「こどもの数」についての話。

平成29年4月1日現在におけるこどもの数(15歳未満人口)は、前年に比べ17万人少ない1571万人で、昭和57年から36年連続の減少となった。過去最低の人数だ。男女別では、男子が805万人、女子が767万人であり、男子が女子より38万人多く、全人口におけるこどもの割合は12.4%。昭和50年から43年連続の低下だ。

こどもの割合が一番多い都道府県は沖縄県で17.2%、一番低いのは秋田県で10.3%。近畿圏の数値を見ると、京都府(12.0%)、大阪府(12.3%)、兵庫県(12.7%)、奈良県(12.3%)、和歌山県(12.0%)とほとんどが全国平均並みだが、唯一滋賀県は14.3%と非常に高い数値であり、これは沖縄県に続き全国で2番目に高い。

大きなトレンドはこのような感じだが、これを各行政区単位のもう少し細かいメッシュで見るとおもしろい。例えば大阪府。こどもの割合は全国平均と0.1%しか変わらず「全国平均と同じ」といえるが、大阪市では10.9%しかなく、都道府県の順位に当てはめると最下位の秋田県に次ぐ数値だ。

これを区毎にみるとさらにエリア毎の特徴が際立つ。

大阪市内で一番こどもの割合が多いのは、ダントツで鶴見区。15.2%。都道府県レベルでは滋賀県以上沖縄未満。ついで天王寺区(13.0%)、阿倍野区(12.5%)と続く。鶴見緑地がランドマークとなる住宅街である鶴見区でこどもの割合が多いのはイメージ通りであるが、天王寺区/阿倍野区といった繁華街に子供が多いのは意外にも思える。

こどもの少ない区はどこか。こどもの割合が10%を下回る区が大阪市内には五つある。北区(8.8%)、中央区(8.8%)の大阪市内中心部と、浪速区(6.7%)、生野区(9.0%)、西成区(6.8%)の市内南部の商住混在地だ。北区/中央区は大半がビジネスエリアであること、浪速区/生野区/西成区はファミリー層からの人気が低いエリアであることがこどもの割合の低い原因であろう。

しかし中央区は「こどもの割合」は低いが、「こどもの割合の増加率」は高い。平成18年と比較して1.2%増。この間の大阪市の「こどもの割合の増加率」は1.0%減であり、1.2%増という数値は最大である西区の2.1%増についで2番目に高い数値である。同期間内にファミリー層をターゲットとしたタワーマンションが大量に供給されたことが一因として考えられる。

では、「こどもの割合の増加率」が低いのは? TOPが平野区の3.2%減。ついで住之江区の2.3%減。どちらも市内南部のエリアだ。両区のこどもの割合はそれぞれ11.9%、10.8%で大阪市内では中位の数値だ。しかし、今後も減少が進むと一気に「高齢化が進んでいる区」となることもあり得る。

毎度毎度「こどもが減った」「高齢者が増えた」などと考えていても仕方がないが、このような定点観測をしていると、年に何度かは自身が保有する不動産を見直すキッカケとなる。次のキッカケは敬老の日か?

出典:「人口推計」(総務省統計局) http://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi1010.htm

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。