田中和彦が斬る!関西マンション事情不定期

[第137号]コロナ禍と郊外居住の関係性〜首都圏と関西の温度差

2021年02月15日

田中 和彦 ( たなか かずひこ )

コロナ禍で、ソーシャルディスタンス・三密の回避などが声高に叫ばれた昨年春から夏にかけて「都心を避け郊外に住む」と言った選択肢が注目された。今は、以前に比べると「三密」と言ったワードが取り上げられる事も少なくなった。しかし、リモートワークが市民権を得て都心に通勤することに対する負荷が軽減された。そして都市部の最大の魅力であった飲食や演劇等のエンターテイメントが楽しめなくなり、都心に住む意味合いが薄れた。

その様な状況が形になって現れたのが、昨年9月に LIFULL HOME’S から発表された「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」、今年2月に発表された「借りて住みたい街ランキング」、それぞれの首都圏版だ。双方ともここ数年TOPだった「池袋」を抑えて「本厚木」がトップになった。

土地勘のない方のために簡単に説明すると「池袋」はJR山手線の主要駅。対して「本厚木」は新宿まで約1時間かかる。厚木市は丹沢山系の山並みがあり自然が豊かな街。「本厚木」がTOPになったことは「郊外人気」の象徴的な出来事だった。

と、ここまでは首都圏の話。では関西はどうか?

あくまで体感値であるが、関西では「郊外志向」は首都圏ほどには進んでいない。これにはいくつか理由がある。

1、山あいのまちが都心から近い
関東平野に比べると大阪平野は狭い。例えば「住宅地」として人気の高い阪神間や北摂は、例えば阪急神戸線「岡本」駅・「芦屋川」駅、阪急宝塚線「池田」駅などは駅から歩いてそう遠くないところに「登山口」があり山歩きができる。あえて「郊外」と呼ばれる場所まで行かなくても「郊外居住」が叶う。

2、大企業に務める人が少ない
上場企業等の大企業はリモートワーク が徹底されている。一方、中小企業・零細企業は、リモートワーク環境を整えるのにコストがかかることや、そもそも人数が多くないから事務所が密にならない等の理由で、それほどまでにリモートワークが進んでいない。首都圏に比べ大企業に務める人の割合が低い関西では、「都心から郊外」と考える人は比較的少ない。

3、ステータスの高い近郊リゾートが少ない
首都圏では鎌倉、軽井沢、箱根、湘南等のステータス・人気ともに高い近郊リゾートが数多くある。一方関西では、その様なリゾート地がない。有馬・白浜などがそれに当たるのだが、知名度や規模で先ほど挙げた首都圏の近郊リゾートには及ばない。私の周りでも「コロナ禍を契機として有馬に移住した」なんて話は聞かない。

 

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コロナ禍での郊外志向が低いということは裏を返せば現在の住宅地に郊外要素があるということ。その証拠として北摂や阪神間の住宅街の価格はコロナ禍で上昇気味だ。新型コロナウィルスの影響は、陽性患者の数同様、首都圏と関西では差異が見られる。

 

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田中和彦 
株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。