田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第167号]住みたい街の男女差はあるか?~SUUMO住みたい街ランキング

2022年05月11日

株式会社リクルートが毎年発表する「SUUMO住みたい街ランキング」。その中に「男女別」がある。男女による順位の差、詳しくは本コラム下段のリンクを見て確かめて欲しいが、多少の前後はあるもののそれほど大きな差はない。しかし、2駅だけ明らかに男女で大きな差のある駅があったのでここに紹介したい。

男性ランキングでは18位の岡本(阪急神戸線)。女性では7位で「女子人気の高い街(駅)」となっている。

岡本の特徴は、高級住宅街と買い物・街歩きの楽しさが両立する街であること。

「岡本」駅は、特急停車駅にもかかわらず駅前にはバス停もロータリーもなく、小さなタクシー乗り場があるのみ。駅周辺に車を乗り付けるのは難しい。同じ阪急神戸線の特急停車駅である「西宮北口」駅や「夙川」駅と比べると、駅周辺の整備状況は明らかに劣っている。

しかし、住宅としての評価ではその二駅に全く引けを取らない。北側を中心に邸宅が並ぶ高級住宅街。分譲マンションも数多くあるが、どれも高単価で取引される神戸市内屈指の人気エリアだ。

駅の南側は、尼崎と神戸を繋ぐ幹線道路である山手幹線があり、その南はJR東海道線「摂津本山」駅で両駅の距離は徒歩で約3分。「岡本」駅周辺は、もれなくJR・阪急の2線2駅利用可能エリアだ。

その両駅の周辺は所得層の高い地元の主婦層、ファミリー層向け、また関西の人気大学である甲南大学のキャンパスがあることから、学生に向けたセンスの良い個店があり賑わう。そのような街並みなので駅周辺が通過交通のない狭い街区であることもむしろ魅力と言える。

逆に女性ランキングは15位なのに、男性ランキングでは堂々の5位に選ばれているのが江坂(大阪メトロ御堂筋線・北大阪急行電鉄)。

江坂の特徴は「利便性が高い」に尽きる。

何と言っても御堂筋線沿線であるのは大きい。新幹線駅の新大阪へは2駅5分。梅田は11分、淀屋橋、心斎橋、なんばも一直線。大阪都心に出るには本当に便利。新御堂筋を使えば車での移動もスムーズ。

買い物においても利便性が高い。百貨店等はないが、飲食店では「マクドナルド」「スターバックス」「サイゼリア」、物販は「ドンキホーテ」「ユニクロ」「しまむら」「ABCマート」などの著名なチェーン店が大変多い。地元の個店もない訳ではないが、住まいとして江坂を選ぶ人の多くは、商業施設の集積度を評価してのことのように思われる。

御堂筋沿線でありながら吹田市であるのも江坂の特徴。大阪市内のコテコテ感がない。色がない街と言ってもいいかもしれない。集落としての江坂の歴史は古いが、都市として開発が進んだのは万博以降でありその歴史は浅い。つい50年ほど前に駅ができ、それまでは田畑の多いのどかなエリアであった江坂の街は、高級住宅街でも所得層の低いエリアでもない、一人暮らしやファミリー層が混在する街へと変貌した。

この二駅の街並みを見比べると、男性は実利的、女性はロマンチストと言えなくもないが、他の順位差では「男女による差」はあまり存在しないように見える。性別より個人の嗜好による差の方が大きいと考えた方が良さそうだ。

 

*参照:SUUMO住みたい街ランキング2022 関西版

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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