田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第201号]定期借地権付マンションのメリットは?

2023年10月13日

京都でマンション反対運動が起きている。

場所は京都市左京区の聖護院門跡(しょうごいんもんぜき)近くにあるコインパーキング。ここで、三菱地所レジデンスを事業主とする高さ15メートル5階建ての定期借地権マンションが計画されており、それに対して地域住民が「景観を守る為に低層の建物への見直し」を求めている。5階建で反対?と思う人もいるだろうが、この建物により五山送り火の一つである大文字山が見えなくなる場所ができる。この辺りは京都独自のエリア事情といえよう。

神社仏閣の多い京都市。他にもその敷地内に建築される定期借地権付マンションはいくつかある。下鴨神社の境内にある「J.GRAN THE HONOR下鴨糺の杜」、京都御苑に隣接する梨木神社の参道にある「イーグルコート京都御所梨木の杜」、阪急「京都河原町」駅に程近い透玄寺との寺院一体開発の「パークホームズ四条河原町」。これらは全て定期借地権付マンションだ。

定期借地権付マンションは、借地期間終了時に土地を返却するため、原則は建物オーナーに財産は残らない。そこがネックとなり定期借地権付マンションの検討に消極的な人は多いが、建物の寿命が決められているメリットは大きい。

そのメリットとは「建替え問題で揉めることがない」から。

区分所有法の規定では建替えは、「区分所有者総数の5分の4以上」かつ「議決権総数の5分の4以上」の承認が必要。かなり高いハードルだ。建替えに反対する人の多くは大規模修繕を支持する。この大規模修繕も「区分所有者総数の4分の3以上」かつ「議決権総数の4分の3以上」の承認が必要。この建替え派と大規模修繕派が対立すると、かなり揉めることとなる。

大規模修繕の先に建替えがあるのであれば話は簡単。4分の3から5分の4に議決権を積み上げる、つまり20分の1の議決権が集まるように説得活動をすれば良い。しかし実際は、建替え派と大規模修繕派は言い換えれば「建替えるvs建替えない」であり立場は正反対。それぞれに根強い賛成者がいれば話はまとまらない。

 

 

建替えをするしないで管理組合が紛糾、住民仲が悪くなり決議後も禍根を残したり、紛糾している間に住民が離れる・建物が劣化していくといったこともあり得る。仮に建替え決議がすんなりと認められても、費用負担や依頼先、プランニング、誰がどの住戸を取得するといった膨大な作業が残る。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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