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住まいサーフィン編集部

[第41号]間違った家具の配置が大事故に!:住まいと暮らしの防災・安全知識

2017年02月09日

以前子供の高所恐怖症ならぬ高所平気症が問題になったことがあります。生まれた時からマンション暮らしで、高いのが普通になって危険に対する感覚がマヒしてしまっている子供たちのことです。同時にそのマンションなどで、きわめて危険な行動をしているケースを多く見かけます。マンションのバルコニーやテラスで若い夫婦がコーヒーブレークを楽しんでいる光景をネットやテレビ、雑誌などで見かけたことはありませんか。楽しそうですが危険もあるのです。

転落防止対策は万全ですか

赤ちゃんがいる家庭では、階段や玄関に転落防止の柵を設置することはよくあります。しかし無意識に行ってしまう危険な家具配置は意外に多いものなのです。

昔は平屋か2階建ての住まいのみ

家具や調度類もびっくりするくらい少なく、その分危険も少なかったのです。

腰高窓に接して家具を配置すると危険

下記の図は寝室の腰高窓側にベッドを配置している事例です。日本の住まいは広くありませんので、やむを得ずこのような配置になってしまうケースも多いと思います。子供であれば、ベッドに乗って窓から乗り出すことは普通に考えられます。図は外側にエアコンの屋外機を設置するためのサービスバルコニーがあります。サービスバルコニーは人が出ることを想定していませんので、手すりの高さ等の規定はありません。お酒を飲んで帰宅して、サービスバルコニーに出てしまい、転落死した事故が実際にありました。ベッドに限らず、椅子やサイドテーブルなどを腰高窓の前に置くことは事故につながる可能性があります。

対策は、サッシにチャイルドロックがなければ手が届きにくいサッシの上部に補助錠を付けるか、窓枠に横棒を子供の頭がすり抜けない間隔で、子どもが転落しない高さまで何ヵ所か設置ください。
腰高窓に接して家具を配置すると危険
©佐藤章子

バルコニー・テラス・吹き抜け等の配慮

建築基準法では、共同住宅や3階建て以上の建築物には、屋上広場や2階以上にあるバルコニーやこれらに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり等を設けなければならない(建築基準法施行令第117条第1項・同第126条)とされています。つまり2階建ての戸建住宅には規定がありませんが、安全を考えればバルコニーの手すりは1.1m必要でしょう。

しかし、バルコニーや屋上テラスに、テーブルや椅子を置いたらどうでしょう。広めのバルコニーには、おしゃれなテーブルセットを置いてモーニングコーヒーでも楽しみたいものです。しかし、椅子やテープルが手すりのそばにあれば、意味がありません。椅子は子供でも持ち運びできます。外が見たくて、手すりのそばまで運んで乗ってしまうことも容易に考えられます。大人が常に見ているか、バルコニーへのサッシに補助錠を付けてロックしておきましょう。
バルコニー・テラス・吹き抜け等の配慮
©佐藤章子

地震対策は大丈夫?

タンスなどの家具の配置も重要です。通常、タンスは下図の矢印方向に倒れます。距離があっても、大地震の時は、タンスは宙を飛びます。(左図)
金具で固定するのがベストですが、できなければ配置に注意ください。金具で固定するほかに、丈夫な耐震棚をタンスの高さに合わせて設置し、金具の代わりにしてもよいでしょう。(右図)

地震対策は大丈夫?
©佐藤章子

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。