編集部厳選!マンション知識最前線!? 不定期
住まいサーフィン編集部

[第133号]住まいを考えることは人生を考えること:リノベーションのすすめ

2016年12月29日

今回は、今まで住まいづくりに携わり、いろいろな家族との打ち合わせの中で感じた“上手に住まいづくりをするための極意”を、少し違った観点から話していきたいと思います。世の中には住まいづくりに関するノウハウ本などがいろいろ溢れていますが、上手に住まいをつくるための最短ルートは、それらとは違ったものであるように思います。

上手に住まいをつくるための最短ルートとは

しっかりと人生設計を立てた上で住まいづくりに取り組むことが、何よりも大切なのです。

建築の学生が教えられること

建築の設計を学ぶ中で、教授からまず言われたのは、「建築を学びたいなら、それ以外の分野の勉強をしろ!」ということでした。頭ではもちろん理解するのですが、本当の意味で理解したのは、住宅メーカーに就職して、多くのお客様に接してからです。特に住まいの設計については、他分野の勉強は重要だと思います。住まいの設計に一番大切なことは、人の気持ちを察すること、人やその暮らしを観察し、その中から本質を引き出すことだと思います。もちろん建築の基礎知識としての構造や材料、工法や性能等の技術知識やデザイン的な知識は必要です。その上で、人を知るための様々な周辺知識や素養が求められることを、学生はまず教えられます。

会社で昼休みに建築の本を読んでいると叱られる?

学生が「建築を学びたいなら、それ以外の分野の勉強をしろ!」と言われるのはわかりますが、驚いたことに就職してからも同じことを言われました。新入社員のころに、昼休みに机で建築関係の本を広げていると、上司に「建築のことは仕事の中で十分に学べる。だから建築以外の本を読め!」と言われたのです。大手の建設会社の設計部で、1フロア200人の設計担当者が2フロア分占めているほど大所帯の会社でした。住宅の設計はごくまれで、オフィスやホテル、プラント、工場、マンション、商業ビル等の設計が主な仕事でした。それなのに、「建築以外のことを学ぶことが大切」と言われたのです。

いろいろな会社で言われる「自分の人生を設計すること」とは

その後に転職した住宅メーカーでは商品開発等、いろいろな仕事をしましたが、中でも営業の仕事が好きで、数年間だけでしたが営業の仕事をしたことがあります。その時に年間200組ものお客さまと接することができ貴重な経験となりました。その時の営業マン研修は、「優秀な営業マンは、自分自身の人生設計がしっかりできている」というものでした。最初の建設会社の設計部でも、「デザインを志すなら、まず自分の人生をデザインしろ!」と言われました。人生設計が大切なことは、営業マンになってすぐに実感しました。

住まいづくりは、多くの人にとって一生に一度の、それも大金を使う大仕事です。しっかりと人生設計を立てた上で住まいづくりに取り組むことが、何よりも大切なのです。このことがどんなハウツー本よりも、上手に住まいを取得する近道です。

営業マンになって気がついたこと

住宅展示場やマンションギャラリー等で接客していると、最初の5分くらいの接客で、そのお客さまが上手に住まいの取得をされる方かどうかがわかるようになりました。何が違うかといえば、真摯な態度と自分の考えが明確なことなのです。まさにお客さま自身の人生設計がしっかりできていて、その上での住まいに対する考えがしっかりしているかどうかなのです。このときにはじめて本当の意味で、「建築以外のことを学ぶのが大切」、「人生設計が大切」を理解しました。人生設計がしっかりしているかいないかで、こんなに違いが出るのかと、お客様の住まいづくりの過程で実感したのです。お客さまの人生設計がしっかりしていないと、営業マンがどんなにがんばっても空回りし、時間もかかるのです。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。