住まいサーフィンレポート2018年夏-秋期 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄が見たマンション市況&狙い目物件 住まいサーフィンレポート2018年夏-秋期 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄が見たマンション市況&狙い目物件

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消費税アップも要注意。この時期、人より早く動いた人の勝ち

 3月に発表された平成30年地価公示、7月に発表された路線価で全国的に地価上昇が続いていることが認められた。特に大都市部の価格上昇が著しい。それが、マンション分譲価格の上昇につながっている。

 現在のマンション価格の上昇は建設費(主に、労務費)が上がったから、とされることがある。しかし、それは事実ではない。

 もし、建設費が上がる事で、新築マンションの分譲価格が上がっているなら、都心マンションも郊外で駅から離れたマンションも等しく値段が上がることになる。ところが、今、都心マンションで値上がり物件が多いのに対し、郊外で駅から離れたマンションは安いままである。

 建設費の上昇は、マンション価格の上昇理由ではない。

 実際、マンションの建設費は2015年くらいまで上昇していた。だから、2015年までは、「建設費の上昇で、マンションが値上がりしている」のは事実だった。が、それ以降は上がっていない。下がることもなく、高値で安定しているのが実状である。

 2015年以降の価格上昇は、ひとえに地価の上昇が原因だ。

 

地価を押し上げている「外国人の増加」

 日本の地価は、少子化による人口減少で下がると思われていた。しかし、国は人口減少を補うため、外国人観光客や外国企業の呼び込みに積極的だ。その結果、外国人観光客は確実に増え、インバウンド効果を生み出した。

 続けて、外国企業の呼び込みに力が入れられる。都心部では、外国企業受け入れのため、アジアヘッドクォーター特区を設けるなどの動きがある。また、カジノ開設に動いているのも外国企業に来てもらいためと考えられる。

 「外国人の呼び込み」という大きな動きで、都心部ではオフィスビルやホテルの建設が盛んに行われている。その結果、地価が大きく上昇した。この動きはまだ続くので、都市部や郊外の駅に近い場所では地価の上昇が続くと考えられる。

 残念ながら、都心や郊外駅近の場所では新築マンション価格上昇が収まりそうもない。加えて、郊外で、駅から離れたマンションにも価格上昇の不安がある。

 

「消費税が上がる前の駆け込み」にも要注意

郊外で駅から離れたマンションが、これから値上がりする。その理由は消費税率が8%から10%に上がることが決まっているからだ。

 「上げる」という話は以前からあったが、今回はいよいよ本当に上がる。そうなると、マンションのように大きな金額の商品は影響が大きい。

 といっても、分譲マンションの場合、分譲価格全体に消費税がかかるわけではない。土地は非課税なので、分譲価格のうち、建物価格分だけが消費税の対象。分譲価格4000万円のマンション住戸であれば、おおよそ半分が建物価格分。分譲価格4000万円の場合、半分の2000万円に対して消費税がかかる。

 消費税率8%のときは、消費税が160万円。これが、消費税率10%になると、200万円になる。つまり、消費税率が8%から10%に上がると、分譲価格4000万円の新築マンションで、消費税が40万円多くなるわけだ。

 40万円も増えるなら、消費税率が上がる前に買っておきたいと考えるのが道理だろう。政府は消費税が上がった分、住宅ローン控除を拡充する方針を示している。しかし、住宅ローン控除は、「自分が払った所得税と住民税が還付される」もの。いくら住宅ローン控除の枠が広げられても、「自分が払っている税金はそこまで多くない」という人にとっては、実質的な効果がない。

 そうなると、消費税が上がる前に買っておこう、という駆け込みが起こる可能性がある。

 今回の消費税アップは、来年10月1日からの予定。その前日9月30日までに新居に入居する人、もしくはその半年前の来年3月31日までに購入契約を結んだ場合、消費税率は8%が適用される。

 つまり、来年4月1日以降に新築マンションの購入契約を結び、入居できるのが来年10月1日以降になる人は、10%の消費税率を払わなければならない。そうなると、残された時間は少ない。

 「住宅ローン控除の拡充」が、どんな内容になるか、現時点では分からない。が、現実的な得はない、となれば、今から約5ヶ月の間に駆け込み需要が起きるだろう。

 特に、まだ価格が抑えられている新築物件の人気が一気に高まる可能性がある。

 その動きはまだ起きていない。それは、嵐の前の静けさなのかもしれない。

住まいサーフィンレポートとは?

実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目物件も紹介。マンション購入のアドバイスとする。

櫻井幸雄

住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。
◇オフィシャルサイト: http://www.sakurai-yukio.com