細野透の「赤信号・黄信号・青信号」不定期

[第39号]新型コロナ問題で低迷する「新築分譲マンションの販売活動」

2020年05月01日

細野 透 ( ほその とおる )

LIFULL社が実施した「不動産事業者の意識調査」

 新型コロナウイルス問題は、「新築分譲マンションの販売活動」に大きな影響を及ぼしています。今回は、感染者数の増加とともに深刻化している、販売活動の実態に焦点を合わせたいと思います。

 その基本的な情報になるのが、不動産情報サイトの「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL社が、3月19日に公表したプレスリリース、「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」です。

【◆調査の概要】
  実施期間「2020年3月9日~2020年3月12日」
  調査方法「インターネット調査」
  調査対象「LIFULL HOME'Sに加盟する不動産事業者」
  回答件数 賃貸仲介533件
       賃貸管理383件
       売買仲介587件
       売買分譲207件

 マンションデベロッパーが新築分譲マンションを販売するために行う活動は、このうち「売買分譲」に含まれています。 

 ちなみに、調査が実施された3月9日は国内の感染者が522人、3月12日は感染者が690人という段階でした。

 プレスリリースのURL
<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000033058.html>

 

質問①──現時点で企業活動に影響が出ていますか?

 不動産事業者に対する1番目の質問は、「企業活動に影響が出ているか否か」です。

 (画像データはすべてプレスリリースから引用)

 全体では「あてはまる(影響が出ている)」が27.1%、「ややあてはまる(少し影響が出ている)」が43.4%となりました。すなわち、全体の70.5%が企業活動へ影響が出ていることを認めています。

 ここで注目したいのは、マンションデベロッパーを含む「売買分譲」各社の回答です。「あてはまる36.2%」および「ややあてはまる37.7%」の合計が「73.9%」と、4つの業態の中では最も高くなっています。

 

質問②──どのような影響が出ていますか?

 2番目の質問は、「現時点で企業活動に影響が出ている」と回答した人に聞いた、「影響の内容」です。

 上の図を見ると、マンションデベロッパーを含む「売買分譲各社(図の水色)」は、次のような問題に悩んでいます。

 1位──内見者の減少(56.9%)
 2位──来店者の減少(49.7%)
 3位──マスクや消毒液など衛生用品が確保できない(47.7%)
 4位──問合せの減少(44.4%)
 5位──売上の減少(43.1%)

 

質問③──今後どのような影響が心配ですか?

 3番目の質問は、「今後の企業活動への影響が心配である」と回答した人に聞いた、「心配の内容」です。

 上の図を見ると、マンションデベロッパーを含む「売買分譲各社(図の水色)」は、次のような問題を心配していることが分かります。

 1位──売上の減少(65.8%)
 2位──内見者の減少(62.2%)
 3位──来店者の減少(58.7%)
 4位──問合せの減少(55.6%)
 5位──社員への感染(50.0%)

 ここで注意したいのは、グラフ①─2(現時点における影響)では、「売上の減少」は5位だったのに、グラフ②(今後の影響)では、「売上の減少」は1位に跳ね上がっていることです。

 これは、「新型コロナ問題が短期に解消」すればいいけれど、「問題が長引く」と企業活動にとって最も打撃が大きい、「売上が減少してしまう」ことを恐れたもの、という風に解釈できます。

 

晴海フラッグの販売センターが「販売活動を6月以降に延期」

 LIFULL社が「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」を実施したのは、2020年3月9日~2020年3月12日のことでした。そして、同社が調査結果を公表したのは3月19日のことです。

 この11日間に、国内感染者数は急激に増加しました。

 ①3月9日──国内感染者522人
 ②3月12日──国内感染者690人
 ③3月19日──国内感染者961人

 そして国内感染者数が1000人を超えた後に、「大きな出来事」が発生しました。

 ④3月23日──国内感染者1140人

  晴海フラッグの販売センターが「販売活動の延期(再開は6月以降)」を発表。

 その内容については、本コラムの[第38号]で詳しく紹介しました。

 記事のURL
  <https://www.sumai-surfin.com/columns/aka-ao-ki-shingo/hosono-20200401>

 

2段階の緊急事態宣言

 そして4月に入ると、事態はさらに深刻になってきました。

 ⑤4月7日──国内感染者が4457人の段階
  東京・大阪など7都府県に緊急事態宣言

 ⑥4月16日──国内感染者が9291人の段階
  全都道府県に緊急事態宣言

 仮に4月下旬の段階で、LIFULL社が「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」を実施したとしたら、どんな結果になっていたでしょうか?

 マンションデベロッパーを含む「売買分譲」各社はすべて、「企業活動に極めて深刻な影響が出ている」「売上が大幅に減少している」などと回答したと思われます。

 

「メジャーセブン各社」の動向

 私は4月7日に行われた「7都府県・緊急事態宣言」の後に、マンションデベロッパーとして強い影響力を持つ「メジャーセブン各社」、すなわち住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス(50音順)の動向についてざっと調べてみました。

 そして、緊急事態宣言が続く5月6日までの期間は、「メジャーセブン各社でさえも、新築分譲マンションの販売に関しては、冬眠状態を続けざるを得ない状態にある」ことを確認しました。

 

(※注)
 この記事のうち、LIFULL社のプレスリリースに関する個所は、同社が「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」の結果を公表した3月19日から、約1週間後に執筆しました。

 しかし、4月に入って感染者数が激増したため、4月7日に東京・大阪など7都府県に緊急事態宣言、4月16日に全都道府県に緊急事態宣言が出されました。

 LIFULL社はその事態を重く受け止めて、4月21日に、第2回「新型コロナウイルス感染症に対する不動産事業者の意識調査」の結果を公表しました。そのサブタイトルは「“企業活動に影響が出ている” “今後の影響を心配している”不動産事業者1か月前と比べて増加」となっています。

 その内容は以下のプレスリリースで確認してください。
 URL< https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000033058.html >

 

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細野 透(ほその・とおる)
建築&住宅ジャ─ナリスト。

 建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

 著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。