田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第189号]京都のマンションは高くない

2023年04月12日

住まいサーフィンの「資産性ランキング」。全国の新築マンションの資産性を1位から順に公表しているコンテンツだが、上位20位に関西のマンションが3棟ランクインしていた。3棟とも京都市内のマンションだった(5位 ジオ西大路御池ザ・テラス、9位 プレサンスロジェ西大路御池、13位 イーグルコート京都御所南プレミアム迎賓館)。

関西在住、とりわけ京都のマンション価格を知っている人からすれば「京都のマンション価格は高すぎる」という感覚がある。普通は、価格が高すぎれば資産価値は低いもしくは将来的に落ちると考えられるが、京都市内のマンションについてはあまりそうは思わない。むしろ将来的にはまだ需要が伸び、需給は逼迫すると考えられる。理由として以下のようなことが挙げられる。

1、国際的な知名度の高さ
ここ数ヶ月、海外旅行客が激増している。公共交通機関が利用しにくいなどのマイナス面もあるが、宿泊事業者や飲食店等は賑わいを戻している。東京はもちろん、海外で京都が好きだという人は大変多い。今後も、さまざまな魅力的な店舗が出店されたり、伝統工芸等の歴史や文化に触れる機会が提供されたりなどすることにより「旅行に行きたい」「セカンドハウスが欲しい」ひいては「移住したい」といったニーズが増加すると思われる。

2、物件の供給が少ない
細かいエリア性の話はさておき、京都市内で人気の高い市街地は概ねJR京都駅から北側の平坦地といって差し支えない。中でも人気の高い中心市街地は面積もさほど広くない。その中心には京都御苑が大きな面積を占め、その周りを平家または二階建ての狭小な土地が取り囲む。また条例等の規制でタワーマンションはもちろん、中高層の建物も少ない。京都市内の建物で一番高いのが京都タワー、6番目は東寺にある五重塔。すなわち住宅のストックが少なく、他都市と比べて供給も多くは期待できない。

3、東京都と比較して安い
京都の不動産相場が高いといっても、東京や大阪と比べるとまだまだ安い。東京都都心5区直近2年の取引事例を見ると平均成約価格は7,200万円~8,200万円程度(平均専有面積55平米前後)、一方京都市は2,600万円〜3,200万円(平均専有面積60平米前後)と2分の1から3分の1程度の価格。もちろん京都市の中でも中心部は高くて郊外部は安い。どこで買っても半分の価格ではないが、京都市内ど真ん中の新築マンション分譲単価は東京の主要ターミナル以外の駅周辺の築浅中古マンション程度の単価であり、「東京で買うことを思えば京都は安い」となる。
REINS調べ

一般的な住宅地であれば通勤時間や利便施設、周辺に居住する人の所得などで価格が決まる。しかし現在の京都は、セカンドハウス需要や観光客に向けた事業等で大阪、東京、海外からの資本が入り、一般の住宅価格とは違う形での価格形成がなされている。「地元住民が買えないから価格が下がる」とは言えないのが京都の実情だ。振り返れば「あの時はまだ安かったよね」。そうなるような気がしてならない。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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