住まいサーフィンレポート2023年冬-春期 住宅評論家 櫻井幸雄が見たマンション市況&狙い目新築マンション

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金利上昇で新築マンションの売れ行きが鈍り、価格崩壊が近い?その中、マイホームを買ってよいのか

住宅評論家 櫻井幸雄

固定金利上昇で、ローン破綻が続出する?

 日銀が金融緩和政策の修正を決め、住宅ローンの固定金利が上昇。その動揺が広がっている。
 この先金利が全面的に上がれば、大きく影響を受けそうなのが、超低金利で組んだ変動金利の住宅ローン。「もし、変動の金利まで上がったら、毎月の返済額が上がる」と不安の声が出ている。
 まず、お断りしておくが、いまは35年固定金利がわずかに上昇した段階で、変動金利に変化はないので、それほど心配する必要はない。
 もちろん、今後は変動金利も上がる可能性がある、が、現実問題として、金利全般を上げるときは、経済の状況が重要になる。現在のように景気が低迷している間は思い切った利上げは行えないものだ。
 米国のようにインフレが進行すれば継続的に利上げが行われる可能性があるのだが、その際はインフレによってお金の価値が下がっている。
 たとえば、30万円だった給料が40万円に上がったが、物価がすべて上がっているので、生活は苦しいまま……そんな状況で住宅ローンの金利が上がり、毎月の返済金が増えることになる。
 その際、家計への負担はどれくらい増すものなのか。現時点で想像するのとは違ったものになるはずだ。
 現在、変動金利の金利が上がるときは、上げ幅や期間に制限が設けられている。
 平成バブルのときは、5%前後だった金利(当時は固定が主流)が一気に8%台まで上がり、新規購入をあきらめる人が続出した。今、そこまで大幅な利上げは起きないことも知っておきたい。

今後、大幅な値下がりが起きるのか

 今はまだ住宅ローンの変動金利は上がっていない。しかし、上がることを心配する人は多い。それは同然だろう。
 固定金利だけでなく、変動金利も上がればローンを組んで新築・中古の住宅を買う動きが鈍る。そうなると、新築分譲マンションの価格が崩壊する可能性を指摘する声もある。
 しかし、もし、マンション価格の暴落が起きたら、景気をさらに悪化させる要因になる。国としては、そのような経済の悪化を引き起こしたくない。それも、金利引き上げに慎重とならざるを得ない理由だ。
 現在の金利水準は、固定も変動も異常なくらい低く、今後固定金利が3%台まで上がったとしても「低金利」と呼べる水準であることに変わりはない。そのことを踏まえ、異常ともいえる低金利政策を改めた……それが今回の「修正」だと考えるべきだろう。
 この先、金利が上がりそう、という不安で、マンション購入を見合わせる慎重派はある程度増えるかもしれない。それでも、暴落は起きないと断言できる。
 理由はいくつかある。
 まず、現在のマンションデベロッパーは経営が安定した大手中心で、体力があるため、多少売れ行きが鈍っても、アタフタと値下げをしない。
 そして、不動産会社の多くは賃貸事業にも注力しているため、新築分譲マンションの売れ行きがわるくなったら、一部を賃貸マンションに変えるだろう。
 今後、インフレが進行すれば賃貸事業の儲けが上がる。売らずに貸すのも、有効と考えられているからだ。
 最後の理由として、これまでの経験で、不動産会社は「大幅値引きが得策ではない」ことを知っている。
 リーマンショックの後、それまでの価格に×を付けて、値下げ価格を提示したケースがあった。それで、購入者が殺到したかというと、むしろ減った。
 大幅値引きするようなマンションは買いたくない、という気持ちが購入者に芽生えたからだ。大幅値引きするより、我慢する。それが、不動産会社の姿勢である。
 以上の理由で、暴落期待の買い控えは得策とはいえない。もちろん、慌てて購入を決める必要はないが、納得できる物件に出会ったら、躊躇しすぎる必要もない。
 それが、マンション購入の基本姿勢といえる。

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住まいサーフィンレポートとは?

実際に販売センターを見て回り、マンションの「今」情報を提供。
年間200件以上のマンション、建売住宅を見て回る住宅ジャーナリスト櫻井幸雄。実際に歩き、目で見て、耳で聞き集めた情報には、数字の解析だけでは分からない「生々しさ」があふれている。
この新鮮情報を「住まいサーフィン・レポート」としてまとめて主要マスコミに配布。あわせて、住まいサーフィン上でも公開する。住まいサーフィン上ではレポートとともに、旬の狙い目である新築マンションも紹介。マンション購入のアドバイスとする。

住宅ジャーナリスト櫻井幸雄の経歴

櫻井幸雄の顔写真

1954年生まれ。1984年から週刊住宅情報の記者となり、99年に「誠実な家を買え」を大村書店から出版。
以後、「マンション管理基本の基本」(宝島社新書)、「妻と夫のマンション学」(週刊住宅新聞社)、「儲かるリフォーム」(小学館)などを出版。
最新刊は「知らなきゃ損する!21世紀マンションの新常識」(講談社刊)。
テレビ朝日「スーパーモーニング」の人気コーナー「不公平公務員宿舎シリーズ」で住宅鑑定人としてレギュラー出演するほか、「毎日新聞」で、住宅コラムを連載中。「週刊ダイヤモンド」「週刊文春」でも定期的に住宅記事を執筆している。

オフィシャルサイト
http://www.sakurai-yukio.com