東京都杉並区の特徴を知る
東京都「杉並区」の特徴 ― ニッポンの自治体 ―
関東大震災被災者が移住、郊外型住宅地の基礎を確立。ただし区内に“杉並木”は無い
東京都・杉並区は、武蔵野台地の上、東京 23 区の西端に位置し、一般に「城西地区」と呼ばれる区域にある。 おおむね方形の地形で、東は中野区と渋谷区、西は三鷹市と武蔵野市、南は世田谷区、北は練馬区に接している。杉並区民の自動車登録は、都内で世田谷区に次ぐご当地ナンバーとして「杉並ナンバー」が公布される。
東京都・杉並区のマンション
2018年、東京都・杉並区で販売された新築マンションは554戸。同区で販売した新築マンション相場価格は6369万円~9486万円だった。同区内の中古マンション相場価格は3640万円~9240万円。静謐な住宅街の比較的低層のファミリー向けマンションが人気だ。
2019年1月現在、杉並区の人口は56万9132人で、32万1531世帯が住む。そのうち外国人は1万7722人、外国人世帯は1万2202世帯だ。同区総面積は34.06平方キロメートル、23区中8番目の広さを持っている。杉並区は、善福寺公園などを有する比較的自然に恵まれた住宅都市としての性格をもちながら成長してきた。
区名の由来は、江戸時代、領主領地の境界を示した“杉並木”
杉並区の地名の由来は、江戸時代初頭、成宗村・田端村の領主であった岡部氏が、領地の境界のしるしとして、青梅街道に沿って植えた“杉並木”の存在が挙げられる。高円寺・馬橋・阿佐ヶ谷・天沼・田端・成宗 の6つの村が合併した際、新しい村名として「杉並村」が採用され、町名、さらにその後の区名となって現在に至る。
同区の中央を東西に横切るのがJR中央線。東の高円寺駅から、阿佐ヶ谷駅、荻窪駅、西荻窪駅までが杉並区である。JRのほかに京王線、京王井の頭線、西武新宿線が横断し、東京メトロ丸ノ内線が乗り入れ、同区内には合計18の鉄道駅がある。
江戸時代の新田開発で大江戸の近郊農家として発展
冒頭で記した“杉並”区名の由来のように、同区域は徳川幕府が江戸に開かれたことで、村々に支配機構が確立された。また、幕府による新田開発など開村もあり、江戸時代前期には杉並区域に20カ村が成立した。同区域は江戸近郊農村として発展する。
明治時代になると、幕府直轄領だった区内の村々は武蔵知県事の支配となり、品川県に編入。
1878年(明治11年)、郡区町村編成法によって東京府は府下15 区と6郡となり、同区域は東多摩郡に属した。さらに、1888年(明治21年)には市制町村制施行により、区内20カ村は杉並・和田堀内・井荻・高井戸の4カ村となる。1922年(大正11年)に甲武鉄道(現JR中央線)の高円寺駅、阿佐ヶ谷駅。西荻窪駅が開業して、翌年の関東大震災で都心から転入者が続出し、人口が急増。郊外型住宅地としての基礎ができたといわれる。1924年(大正13年)町制を敷く。
中島飛行機がやってきた
大正時代後期、大根畑が広がる杉並の村に大工場がやって来た。馬車や牛馬が行きかう青梅街道沿い荻窪で、飛行機のエンジンを製造する中島飛行機東京工場だ。中島飛行機は戦後に分割されて、三鷹の施設は富士重工業に、この荻窪工場は、1954年にプリンス自動車に姿を変えていく。そのプリンス自動車も1965年に日産自動車に吸収合併となり、当施設は日産工場となる。
2001年、日産はこの土地をUR(独立行政法人都市基盤整備機構・旧都市基盤整備公団)に売却。現在、杉並区住民の安全を守る防災公園「桃井原っぱ公園」に生まれ変わっている。日産は、土地売却にあたり、永いあいだ世話になった地元住民/杉並区/行政機関に貢献する施設づくりを希望した。そして公共性の高い土地利用が実現できるものとして、杉並区の意向を踏まえ、多くの売却候補の中からURに土地利用計画の協力を依頼し、売買契約を結んだとされている。日産工場跡地には桃井原っぱ公園」に隣接して民活で分譲マンションや賃貸住宅、商業施設などが集積している。
杉並区の重要国際産業、「アニメ産業」
一方で杉並区はべつの顔をもっている。日本のアニメ制作会社は、全国に約200社あるとされる。杉並区内にはこのうちの約70社が集積し、市区町村別では全国で2番目の多さだ。杉並区では、アニメを区の重要な産業と位置づけ、「アニメの杜すぎなみ構想」(2012年度から2021年度)のなかで、アニメ産業が成長していることを10年後の姿として描いている。
11年前にオープンした「杉並アニメーションミュージアム」は、「日本のアニメの歴史」から「これからの日本のアニメ」までアニメ全般を総合的に紹介する施設。入場は無料。
杉並区というと住宅地という印象が強いが、丸美屋食品やサミットストア、アメリカンエクスプレス日本など、ここに本社を構える企業も少なくない。
公開日:2019.12.25著:吉田 恒道