東京都北区の特徴を知る
東京都「北区」の特徴 ― ニッポンの自治体 ―
日本を代表する工業特区として発展、ただ近年は人口高齢化が進む
東京都北区は戦後1947年(昭和22年)、それまでの王子区と滝野川区が合併して誕生した。2017年3月、区制施行70周年を迎えた。東京・北区は23区の北部に位置し、面積は20.59平方キロメートル、23区で11番目の広さだ。23区の北にあるから「北区」としたわけで、比較的安易な名称だが、「北区」は東京都(特別区)をはじめ、大阪市や札幌市の政令指定都市の行政区を含めると全国に12区存在する。全国でもっとも古い「北区」は、大阪市旧北区(1889年に誕生し、1989年に大淀区と合併して現在の北区になった)を別にすると名古屋市北区で、1944年(昭和19年)に誕生した。
東京都・北区のマンション
2018年、東京都・北区で販売された新築マンションは1348戸。販売価格は4456万円~7205万円。中古マンション物件の相場価格は2940万円~7560万円だった。
2019年1月現在、北区の人口は35万1976人、総世帯数は19万6580世帯だった。なお、2019年1月の65歳以上の人口は8万7760人で人口に占める構成比は24.9%に達する。この65歳人口および構成比は23区中トップだ。また、働き盛りの35~49歳の人口は、23区で最下位である。加えて、死亡率は23区で第2位、出生率は21位、自然増加率は台東区に次ぐワースト2位だ。区外からの転入者が多い台東区と比べ、北区は社会増も多くない。ただ、人口減少は2000年で底を打っており、以降は微増に転じている。
水と緑に恵まれ、かつ利便性の高い鉄道ネットワークが特徴
北区の西側は武蔵野台地の一部をなす高台で、それを削るようにして石神井川などいくつかの河川が流れている。区の東側は低地で、台地との境は崖線になっている。こうした地理的な特徴から、北区一帯には湧水や滝が多く、水に恵まれた土地として古くから知られる。同区内には飛鳥山公園、清水坂公園、赤羽自然観察公園、都立浮間公園など、緑豊かな公園が多い。
北は荒川と荒川放水路に接し、埼玉県川口市と戸田市に接する都県境の自治体だ。都県境の区でありながら田端地区と中里地区の一部はJR山手線の内側に位置する。
また、山手線、京浜東北線、埼京線などJR東日本の駅は11駅あり、これは23区中でもっとも多い。これに地下鉄、都電を加えると20駅。平均すると1平方キロメートル当たり1駅となる。区内のほぼ全域が駅からの徒歩圏、歩いて暮らすのに便利な街といえる。もちろん都心へのアクセスも非常に良い。
江戸の典型的な近郊農村は、渋沢栄一によって日本洋紙製造の街に──
江戸時代の現在の北区エリアは、典型的な江戸の近郊農村地帯だった。また、春は飛鳥山の花見、夏は王子七滝での滝浴み、秋は滝野川の紅葉狩りと、庶民の身近な行楽地としても賑わいを見せた地域だった。
明治維新以降、北区は大変貌する。東京を代表する工業特区として発展するのだ。1875年(明治8年)に「日本資本主義の父」ともいわれる渋沢栄一氏がこの地に製紙会社「抄紙(しょうし)会社」を設立する。現在、製紙会社の2大巨頭とも言われる王子製紙と日本製紙(旧十條製紙)のルーツだ。製紙工場はさまざまな薬品を使用するため、周辺に化学工場が立地し、昭和の初めには、北区は重化学工業を中心とする東京屈指の工業地帯として成長した。
また、「抄紙会社」に隣接する場所に1876年、大蔵省紙幣寮(後の大蔵省印刷局、現在の国立印刷局)が開設され、国産第1号紙幣が製造された。北区は日本の紙幣発祥の地でもある。国立印刷局は、現在も北区内に王子工場と滝野川工場がある。王子工場では切手やパスポートなどが、滝野川工場ではで現在もお札が作られている。世界のトップクラスと言われる日本の紙幣製造技術を、130余年にわたって守り続けてきたのが北区の印刷工場なのである。
戦前の北区の発展を促したのが、1887年(明治20年)に第一師団工兵大隊の設置だ。その後、さまざまな軍事施設や軍需工場の集積が進んだ。戦前の北区は、軍用地が総面積の約1割におよぶ、東京屈指の「軍都」でもあったのだ。
戦後、昭和の経済成長期、こうした軍用地の跡地に、高度成長を支える「企業戦士」のための大団地が建設される。その代表とも言える都営桐ヶ丘団地と公団赤羽台団地は、60年代当時東京随一のマンモス団地だ。
製紙工場周辺にあった関連サプライヤーの工場跡地などに都市型分譲マンション建設が進んでいる。
オリンピックを見据え国際的なアスリート育成を行なうNTC
同区西が丘に2008年に開設した「味の素ナショナルトレーニングセンター(National Training Center、NTC)」は、2000年に当時の文部省が告示して設置したトップアスリートのためのトレーニング施設。管理は独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が行ない、日本オリンピック委員会(JOC)加盟団体所属の競技選手強化目的で利用されている。隣接する国立スポーツ科学センターと連携してオリンピック選手の育成を行なう。
公開日:2019.12.25著:吉田 恒道